一時は私の上司だった方が事務処理を委託している会社との取引で大きなミスを犯しました。
細かいミスは日常茶飯事、大きなミスも本記事の1度ではないのですがその後の発言などから大きな爪痕を残し記憶に残っていることがあります。
その方は当時で50代中頃、ガッチリしており姿勢も正しくスーツもパリっとており、時計やバッグ、シューズ等も高価な物ばかりを身に着けていました。単にザ・ブランドというわけではなくセンスも備え「地位があり良い物を身に着けていてしっかりした人」とイメージされやすい雰囲気でした。(本人もそれを狙っていました)
社長と私とその方の入社前の顔合わせでは謙虚で落ち着いており「座右の書」、マネジメントスタイルなどの話をされて、どれも納得感のあるものでした。そして入社日、今後の方針などをざっくり決めるために私とその方で面談&ミーティングが行われました。
その際に、
「君もそれなりに経験があるのは分かる。しかし私なら君の足りない所を埋めて次のステージに連れて行く事ができる。付いてこれるかっ?」
「◯◯業務の極意を伝授してやろう」
「君には期待している」
と御高説を賜りました。
それはもうラオウのような圧とスタンスでした。
少し経って聴いたのですが、姿勢や服装、喋り方などは全てビジネス上で物事を上手くいかせるために気をつけてやっていると教えられました。なるほど「魅せ方」か、ここまで徹底出来ているのは凄いなと思いました。
信頼の裏返しな部分もあったのですが私と2人の時は素が出るようになっていきます。
また自分より下の職位のメンバーといる時は尊大な態度と口調でパワハラ気味、手柄は全て自分が貰いミスは部下のせいにする。
委託先とのコミュニケーションでは圧倒的に上からで何かミスがあると猛烈に詰めて生産性のない作業をやらせまくるという仕事ぶりでした。
魅せ方を気をつけているのは経営といる時、自分より職位が高い人といる時だけでした。ルックスは古いタイプの男前で身なりはビシっとしており姿勢も綺麗でガッチリしていましたが典型的な上には弱く下には強いというタイプだったのです。
さらにその元上司は武道を長らくやっており有段者でした。にも関わらず手は出さないにしろ出そうとするようなポーズはよくやっていて「拳で」分からせようとするような威嚇や脅しを度々していたのです。実際にパワハラで刺されたこともあり、常に職位だけで人を見ていました。
その辺全般にガッカリしつつ入社から6か月が過ぎたころには私に対して低姿勢、1年が過ぎた頃には別の部署に異動となり降格されてしまいました。
理由は徹底的に成果が上げられなかったためです。
見た目や言動への気配り、自己紹介やプレゼンのスキルは磨いて来られていましたが肝心の仕事は全くのダメダメだったのです。
これはそんな元上司が大きなミスを犯した際に自業自得で追い詰められた時の話です。
■バイリンガルゆえにっ!!
それは少し考えれば当たり前に分かることでした。
新たな施策に関する事務処理で委託先と調整中との報告を元上司がした際に会議に参加している各リーダーが一斉に「え!?」となったのです。
委託先での業務開始日が私達の会社の新施策開始日より1週間以上遅く設定されていたのてした。諸々踏まえて少なくとも1ヶ月前に開始をしてもらわないと間に合わないのは明らかであり、このままでは委託先に支払い予定の数千万円が無駄になるという事態だったのです。
当然そういうスケジュールでないと厳しいのは元上司も知っており、この日以前の全体会議でも何度か話に出ています。立場や状況から知らなかった、聴いてない等という言い訳が通用する筈はありませんでした。周囲が事勿れでビビって指摘しないので会議後に私が元上司を呼び止めて次のように伝えました。
・このままでマズイこと
・回避するために即やるべき内容
・即やるべき内容に必要なこと
・この件で私以外でフォローしてくれそうな人
・私はオペレーションのパワープレイでフォローすること
合わせて現状を社長に即報告した方がよいと伝えました。
そして私は自分のチームに状況を伝え、もしかしたら◯◯かもしれないので協力してほしいとメンバーに言いました。
何度かフォローする羽目になり、私のことを自分に都合よく経営に報告していたのは知っていましたが憎めないおじさんだったのです。そして1時間か2時間ほど経った時に私の所に元上司がやって来ました。
私「どうですか?大丈夫そうですか?」
元上司「うん、とりあえずその件で社長がミーティングしたいみたいだから、忙しい所悪いけど来てくれる?」
私は「ん?」と思いましたが元上司が言っていることが分からず複数名にヒアリングしているのかな?と思い会議室へ。
会議室には社長と専務が座っていました。
話はその2人と私を呼びにきた元上司、そして私の4名で始まりました。
開口一番社長が言います。
「◯◯社への委託の件を(元上司)さんから聴いたけど、◯◯君(私の名前)が委託先に日時を伝え忘れていたんだって?」
私は鼻血が出そうになりました。
耳を疑うとはこの事でした。
各部署の責任者が事勿れで巻き込み事故を避ける中、唯一手を差し伸べてチームメンバーにも協力を要請し、いつでも動けるようにしていた私にミスを擦り付ける。
しかもこんな一瞬でバレる嘘を…
私は質問してきた社長には回答せずに元上司に問いかけました。
「(元上司)さん、いいんですね?こんなの絶対に上手くいきませんよ?どうせやらないといけないのに誰も助けてくれなくなりますよ?本当にいいんですね?」
事態を察した社長は元上司の方を向いて無言の圧をかけています。
元上司は下を向いていました。
私は言いました。
「こんな事やっている時間が勿体ないので、本当の事を言って早く動きましょう」
元上司は観念して「申し訳ありません。嘘をついていました」
私はホッとして次のアクションをとるために動こうとしますが社長がぶちギレました。
そして専務と一緒に元上司を詰めます。
「そんなすぐバレる嘘で私と専務の時間を使ったのか」
「フォローしてくれた仲間を裏切るのは許せん」
「そろそろ処遇も考えないといけないね」
「だいたい元上司さんは◯◯〜」
「いつも元上司さんは□□〜」
「以前から〜◇◇他にも〜△△」
私は、いや分かるけど早く動かないとマズイ!!と内心思いながら元上司を見ていました。社長と専務の口撃が止まり「とりあえず次のアクションの前にハッキリさせておいた方がいい。まずは◯◯君(私の名前)に一言謝罪するべきだよ」
その時でした。
元上司は下を向いて両手をこめかみ付近にあてワナワナし始めたかと思いきや急に上を向き…
「アァイ、アァーーームッ!!」と叫んだのです。
社長と専務と私は余りの状況に一瞬笑いそうになりますが、すぐにちょっと怖くなって焦りました。そして私はビビりつつも吹きそうなのを堪えて「社長さん、この件は急がないとマズイですし一旦解散して落ち着いて話しましょう。元上司さんも疲れていると思いますし」
社長は私に合わせて「ん?ん、うん?そうだね。それが良いね」と言いました。
そして社長が元上司さんに退室してすぐに行動するように言い、室内には社長と専務と私だけに。先程の現象について3人で再確認して、こんなの誰に言っても信じてくれないよね?という認識で一致しました。
日本語と英語が話せる元上司は日常的に英会話に熱心でありメモは英語で取る、出退勤の移動中は英語のラジオを聴くという感じでした。私は話せないので分かりませんが英語を話す人は英語の夢を見るらしいですね。
この時の元上司は究極に追い詰められたことで英語で意味不明なことを発してしまったのだと思います。それほど普通ではなかったし、それほど普段の元上司さんは立ち居振る舞いや言動に配慮していたのです。
問題自体は私のチームと他の2チームの責任者により事なきを得て終息しました。
この時のアイアムは耳にこびりついていて、未だに時折思い出して苦笑いしてしまいます。
■おわりに
その方は既に退職されているのですが、退職前の1年はキツかったと思います。
次から次にミスを犯し、全体ミーティングでは詰められ会社の飲み会やイベントでは本来のキャラではないコミカルな役割をやらされていましたから。
とはいえ全ての部署にフォローされながら、かなりの高給をもらい続けていたので多少止むなしとも思います。
しかし最後のミスで糸が切れたのでしょう。結局全てを途中で放り投げて退職となってしまいました。常日頃から自分が退職に追い込んだ社員や自分より職位が低い社員について「物事を途中で投げ出す者を俺は漢(おとこ)として認めんっ」、「最低限の礼もつくさずに辞める奴はどこに行っても一緒だっ」、「世の中、成すべきことを成さずに逃げる奴が多すぎて困るなっ」、「江戸時代なら切腹を申し付けているっ」、「俺を見ろっ!そして盗めっ!それが早道だっ」等と言っておきながら・・・。
私は前述の通り、元上司と部下という関係性もあって何かあれば超低姿勢でフォローを求められ私自身も積極的に協力をしていました。
そして2人で食事に行った際には「あれ?元上司さん、極意はいつ教えてくれるんてすか?」といじって「それは忘れてよ〜◯◯くん」みたいなやり取りをしていました。
謙虚なフリをしていただけで、本当は偉そうにしたい方なのでそういうイジリも嫌だったのでしょう。
私は元上司のためにクライアントに何度も頭を下げたりしていましたが…
こんな事もありました。
とあるトラブルで私とチームメンバーが火消しのため休みなく働いていた時期の出来事です。
当時、仕事最優先でいつでも何時まででも会社にいた私が1か月前から元上司やチームメンバーに用事があるからこの日は18時で帰ると言っていた日がありましま。というかそもそも土曜日で休日無給出勤でしたが・・・。
当然、普段の私を知っている皆は「どーぞ、どーぞ、むしろ休んでください」でした。
ところが17時くらいに元上司から電話が…
「クライアントの〇〇部長から電話があって、今日の状況を聴かれたのと、ちょっと寄りたいんだけど行っていい?と言われて…、咄嗟に承知しましたって言っちゃった…どうしよう」
カス!
自分が大炎上が起こった件の担当部署の責任者にも関わらず出来ることがないから普通に休んでいた元上司。よりによって唯一私が用事があると言っていた日(そもそも休日出勤)にクライアントの訪問ビビって勝手にオッケーしやがるとは!!士道不覚悟にもほどがあるっ!!
「どうしよう」じゃねーよ!お前が来いよ!という話ですが「普段見てないから言っても答えられないしぃ」とギャルみたいな口調で言いやがって!
結局私は泣く泣く予定をドタキャンし対応する羽目になりました。
そして大炎上が鎮火したら全て自分の手柄として経営に報告していたという…
見た目(ルックスではなく清潔感や年齢、職位にあっているか)、姿勢、言動などの魅せ方は元上司が過去見てきた中で未だに最も優れていました。取引先の方と初めて会う際に何度も元上司と私で応対したことがありますが100%「元上司が上役で私はお付のアシスタント」みたいな扱いを何度もされました。そしてそう思われたまま進めようとする元上司。
その方よりも後に入社した20代前半の子にも早期に舐められるほど仕事が出来ないのに立ち居振る舞いと自己アピールだけで高給を得て4年ほど在籍したことには感服ですね。
私がいる会社を辞めて6か月ほど経った後に外資系の会社の管理職におさまったとヘッドハンター経由で聴きました。
それから5年以上経っていますが、今はどうしているのか?
個人の成果がそれほどクローズアップされない規模の会社であれば正体を隠して無難にこなしているのかな?
めちゃくちゃポンコツでめちゃくちゃ保身でめちゃくちゃ部下の手柄をとるし見た目以外に良い所ないのになぜか憎めない人でした。
なぜだろう…