今から10年ちょっと前で別記事の「ワインバーの話」と同時期の事です。
『自称ハイパフォーマー』という名称について皆様はどう思われるでしょうか。
仕事に対する考え方や向き合い方は人それぞれです。趣味優先、家族優先、最低限はこなす、残業は絶対いや、家族都合で時短など。また人は大なり小なりミスをしますし基本的には1人で完結できません。
ですので仕事がデキないとかミスが多いとか最低限をこなして必要以上に頑張らないというのは止む無しですし責める気はありません。
しかし100人が100人揃って不相応である感じる高給をもらいアルバイト3日目の年配の方にも音速で教わる立場になりながら「私は昇給昇格しに来た」、「この会社はレベルが低すぎて私には合っていない」、「(私)さんの上司になる日も近いと思います」などと連呼する人がいたら?
私個人としては許されるなら武藤敬司のようなシャイニングウィザードを喰らわしたくなります。
そんな世に蔓延る『自称ハイパフォーマー』、最高権力を持つ取締役の女帝をバックに持ち(自分が連れてきたので後ろ盾になっている)鳴り物入りで転職してきた男性社員のエピソードをご紹介いたします。
■「このままでは飼い殺しに合うと危惧しています」
結果論かもしれませんが正式入社前の顔合わせから嫌な予感はしていたのてす。
男性社員を連れてきた取締役の女帝派は早く馴染めるようにと正式入社前に私を含む本社や支社の担当者と顔合わせ会を開きました。
その際に出た発言として次の様なものがあります。
・自信しかないので早くワークしたい
・これまで成果にコミットし続けてきたので自分に不可能はない
・最初は覚えることがあってもすぐに皆さんに追いつき追い越すことになると思う
・皆さんがもし成果で困ったらコンサルするので何でも聴いてください
・成果が年収に反映される会社だから選んだ、来年の今頃は年収を倍くらいにしたい
次々に出てくる自信満々の発言とルー大柴的な横文字、連れてきた女帝は何も疑っておらずニコニコしていました。(ちなみにルックスと年齢から女帝の恋愛対象外の模様)
私達既存の社員は苦笑いを抑えつつ「頼りになりますね、その際はぜひお願いします」等と調子を合わせていました。
当時は西日本に6つの支社、東日本に3つの支社、北日本に4つの支社がありました。
そして西日本と東日本は私が担当し、北日本は女帝が担当していました。
女帝派は恋に大忙しなため、自分の代わりに北日本を担当する社員をヘッドハンターを使って連れてきたのです。超お気に入りだったAと社員と気まずくなったのも理由です。また社内に自分に従わない勢力が出来た為に息のかかった直属の社員を増やす、そして自身は極力本社に居たいという思惑もあったと思います。
そのあたりの話はコチラです。
ヘッドハンターを使って連れて来られた方の年齢は当時で50歳前後、3カ国語を操り私の勤める会社の競合他社で実績を積んでいた即戦力の男性社員です。
男性社員は短髪でツンツンヘアをしていましたので以後はツンツン社員とします。
入社して3日ほど経ち、急ぎ業務研修となりました。
研修は関東と北日本の2つの支社で行なわれ、実際に現場をみたり、ツンツン社員が担当する支社の社員と交流を持つ為に実地研修も同時に行われました。
研修期間中に女帝と同じホテルに宿泊しているのですが超真剣な顔で私に相談がありました。
「夜の誘いはどうやって断れば良いでしょうか?」
「部屋に来たりとかは流石にないですよね?」
女帝がツンツン社員を異性として見てないのは誰の目にも明らか(羨ましかった)だったので心配ないですよと回答しますが「大丈夫かな〜、年齢が近いんで私の事がストライクっぽいんですよね。それだけが心配なんです」と女帝っぽい発言をするツンツン社員、実際は初日こそ入社後フォローの一環で夕食を共にしたもののは以降は他の社員も含む複数人で食事だけで以降のお誘いは皆無だったようです。
そして研修自体は大きなハプニングもなく終えたようでした。
1ヶ月ほど私のいる支社で実作業を学び一通りの業務を習得すべくOJTが始まりました。
OJT中の主な出来事を時系列で並べました。
①どんどん剥がれていくメッキ
ツンツン社員は顔合わせ時に言っていた言葉に全くコミットしていませんでした。
・後から入社した3日目の年配アルバイトさんに業務知識で負けて教わる→アルバイトさんから「あの人は入社したばかりなんですか?」と言われて困る
・競合他社でもやっていたと豪語していた事が一切出来ない→「あ~それですね。やってました。OKです」と言いつつ出来ない
・office系がほぼ使えず文字を打つのも超遅い
そして特に記憶に残っているポンコツエピソードは「Eメール」です。
文が変、勘違い発言があるのは想定内でしたが、そもそもの句読点やクエスチョンマークの使い方がファンタジーだったのです。
例えば北日本での業務研修&実地研修を終えて後、私が「全体調整をやってくれた女帝や北日本のメンバーにお礼メールを打っておいたらどうですか?」と言った際のメールは次のような文がありました。
以下メール
*************************************
皆様
◯日の間、多くの事を学ばせて頂きました?
お忙しい、中ありがとうございました?
お陰様を、持ちまして私もスタートライン、に立つ事が出来ました?
北日本でお世話に、なった間はお互いに教え合い。どちらかというと私の方が教えたかもしれませんが有意義な時間が過ごせました?
皆様にお力添え。頂いた、内容を活かし会社に貢献していきます?
女帝さん教わったことも大変勉強になりました?
(女帝さん”に”が抜けているので教えた感じになっている)
北日本メンバーさんもご協力ありがとうございました?
*************************************
なんということでしょう。
「。と?」の使い方1つでこうまでふざけた文に仕上げるとは……。
受信後すぐに気付き、最初の一文で3度見くらいして目を疑いましたが良好なコミュニケーションが取れた裏返しのボケかと思ったのです。しかし文末付近の女帝に対するボケは「おいおいまだ早いよ。まだ1か月ちょっとだよ」と思いました。
しかし当の本人に目をやると意気揚々としており全く何も考えていない様子でした。
そしてこのレベルのメールは社外の人、社内の他の人にもバシバシ送ってしまうのでした。最初のメールは全員がスルーしたものの3回目メールをくらいのメールを社内で打った直後に女帝から電話が鳴ります。
「あのさ、ツンツン社員さんのメール。これ見た?これ何なの?彼は何?フザケてるの?」
ごもっともな指摘に少し吹きそうになりますが、なぜか若干私が詰められます。
オ・マ・エが連れて来たんだよ!!と思いましたが私はグッと堪え「メールも酷いですが、業務内容もちょっと厳しいですね。具体的には〜、全く悪びれず〜、他責ばかりですし〜」
女帝はあまりのツンツン社員のヘボさに口数が減って行き、私に1つの仕事をふります。
「今後メールを送る時は送信前にあんたがチェックして、次そっちに行った時は業務内容の習熟度を私も見るから!」
嘘だろ!?お前がやれよ!メールのチェックって何だよ!ヘッドハンター使って採用した管理職なのに!?大台レベルの年収で競合から引っ張った20歳近く歳上社員のメールのチェック?本当に?
めちゃくちゃでした。
そして女帝が部内メンバーをCCに入れた状態でツンツン社員にメールを送ります。
「今後は送信前に1度(私)さんに見せるように〜、(私さん)のOKをもらうまでは送らないように〜、対象は社内外の全てのメール〜」
これほどまでにゴミみたいなタスクは久しぶりだなと思いました。部下や新人なら分かりますけど、違いますからねっ!!
そして全件メールチェックという苦行が開始。
当の本人は「(私)さんも大変ですね〜」となぜか上から。
数日後に女帝が来た際は会議室に2人でこもり色々とチェックをしていましたが出て来た女性の顔はこの世の終わりのようでした。すぐ後ろを歩くツンツン社員は対照的に満面の笑み。
女帝は私と何人かのマネジャーを呼んで言います。
「ちょっとね、アレ(もはやあれ呼ばわり)きっついわ。酷いね。なんなの?久しぶりにあんなレベル見たわ」
お前だよ!お前が連れて来たんだよ!しかも早めにアラートをバンバン出してたけど自分が連れてきた保身があって「まだ入ったばかりだから〜、彼の実績は凄いから今教えるの大変でも後で何倍にもなって返ってくるから〜、教え方変えてみたら〜」等とほざいていただろ!?と。
私達は女帝がいう次元にツンツン社員が住んでない事を早めにしってしまい緊急アラートを投げていましたが、その都度女帝は相手にしてくれなかったのです。
挙句の果てには私たちがいないところで「(私)たちがツンツン社員の批判をするじゃない?あれなに?ヤキモチ?」等とほざいていたことを知っています。
そして久しぶりに自分が直接コミュニケーションをとったら小一時間でこの評価。ウンザリでした。
女帝派は続けます。「ちょっとね、このままじゃマズイから育成計画を引き直して、彼の役割も〜に変えて軌道修正しよう」
高給の管理職なのにアシスタントレベルの業務内容に絞った上に我々が全員でフォローするという体制変更に憤ったもののツンツン社員がいなくなると女帝のお膝元である北日本に関わる頻度が増えるかも!?という保身で渋々みんな協力します。
ちなみにツンツン社員がこちらにやって来てすぐに北日本のメンバーと話す機会がありました。彼、彼女達は一様に「先週までこっちに居た人が北日本の担当者になっちゃうんですよね…?」と最大限に遠慮しつつも来て欲しくない感丸出しの質問をしてきました。
そんな中でツンツン社員は全く成果を出せず、改善もしないまま(メールの?は一応改善)、入社初日のアルバイトさんでも即答できる内容で間違う、過去の誰しもが入社して直ぐに習得したレベルの事をノートを見ながらやっても出来ないという超低空ビジネス飛行を維持していました。
そしていよいよ心が折れた女帝から夜遅くに電話が鳴りました。女帝は相当焦ってました。社内の雲行きが怪しくなっていた上に連れて来たツンツン社員がポンコツ・オブ・ポンコツだったからです。
「ねぇ、あんたが北日本も見ない?そしたら私と居る時間が増えるじゃない?」
会社から支給されている携帯を握り潰しそうになりました。
絶対にお断りです!!と。
1億もらっても嫌でした。嫌な思い出が多過ぎたのです。
それはセクハラやパワハラという事だけではありません。年末からこの年の年始にかけて決定的に反女帝になる出来事があったのです。それ以降私は表面上はこれまでと変わらないスタンスを保っていましたが内心は明確に反女帝でした。それほどの事があったのです。
私は濁しつつ丁重に断りました。
「いやぁ、ありがとうございます。出来ればそうしたい所もありますが私が北日本を見ると本社や西日本が手薄になってしまい安定している箇所が崩れる可能性があります。それは女帝さんも本意ではないですよね?むしろご迷惑をかけてしまいますし心苦しいかなと」
取締役さんは元気なく「そうね…」と言いました。
この付近では「SOUNE」が口癖になっていました。
このお誘いのあとでもう1度電話がかかって来たことがありますがそれは別記事の『⑲【女帝の不安】』に記載しています。
一方、ツンツン社員についても同じ場所にいる時間が多くなり話す機会が増えたことで疑問が解消していきます。
【競合他社で成果を上げてまくっていた人がこんなわけない】という事です。
話を聞いていくと謎が解けていきました。ツンツン社員は競合他社に管理職として入社したものの能力が高過ぎたために他の社員と一緒のタスクだと周りが自信をなくすことから早々に現場から遠ざけられ主に書類のチェックや決済を担当していたとのこと。
なお能力が高過ぎたは本人の言、優秀なメンバーが既に完成&チェックも終えた物が回ってくるだけのタスクだったようでした。成果については上記の通り、業務に関わってないため自分の成果ではなく全体の成果を職務経歴書に書いていただけ。
一応、私は伝えました。
「念のため言っておきますが我々は自信を無くさないので本気出してくださいね」
ツンツン社員は半歩前に顔を出して答えます。
「ホントに大丈夫ですか?(キリっ)」
この期に及んで「まだ本気出してないだけ」を匂わせるツンツン社員に心底疲れたのを覚えています。
②大事件が起こるがなぜか誰よりも喜ぶ
ツンツン社員が入試て2か月が経った頃に衝撃が走りました。ツンツン社員を連れた来た&我々が長年苦しめられていた女帝が突如解任されたのです。
・45歳以上の男性社員
・著しく清潔感のない男性社員
・マネジャー以下の女性社員
これらに該当する人にはほぼ害がなかったですが、私や周りは女帝に心底疲れていたので解任され会社を出て行った時は軽い歓声が上がった程です。
日本の夜明けでした。
そして本記事の主役であるツンツン社員は全く害を被ってないばかりか、前職よりも遥かに良い条件で入社させてもらった上、事ある毎に守られて来たにも関わらず、なぜが一番テンションが上がり喜んでいました。そして私と同僚に「いやぁ、これで会社が前に進みますね!」と言ってきました。
まずお前が進め!と思いましたが…。
本人は全く理解いませんでしたが、これ以降のツンツン社員は後ろ盾を無くして成果のみで評価されることになったのです。
③そして退職へ・・・
ツンツン社員が退職したのは女帝が去って1か月ほど経ってからです。奇しくも女帝の後を追うかのように去って行きました。時系列では別記事「新たな女帝の登場と目まぐるしく入れ替わるヒト・モノ・コト、そして『新世界へ』」の「㉑【女帝の居ない世界】」になります。
入社から3か月、経営や上司は取締役さんの置き土産であるツンツン社員に困っていました。どうやって円滑に辞めてもらおうか?と。
そんな時に本人が私の所へやって来ました。
「少しお時間的いいですか?、ここではアレなんで別の部屋で」
話の内容は予想外でした。
「実は転職を考えています。そこで色々と世話になった(私)さんには伝えておこうと思ったんです」
「入社前は私を複数支社の責任者にするという話でしたが、その気配がないし私が競合に行ったり前の職場に戻るのを恐れてるんじゃないかと思っています」
これまでの言動や行動からツンツン社員の実績は幻としか思えず私は「何言ってんだコイツ?」と思いました。さらにツンツン社員は攻勢を強めます。
「ここに居ても成長できない」
「自分は大きな使命を持っている」
「◯◯さん(彼を叱った事がある他支社の担当者)は私の能力を妬んでいる」
中でも記憶に残っている台詞は下記です。
「このままでは飼い殺しに合うと危惧しています」
そういう事を言う前にメールを1人で打てよ?と思いましたが…。
家族もいるし年齢も若くないしツンツン社員の行く末を案じた私は経営や上司の考えに反して引き止めてみました。
「まだ入社から3か月ですし転職するにも準備がいると思うんで1度考えたほうが良いんじゃないですか?」
すると「ふぅ〜」と大きく息を吐き「その手には乗りませんよ?」と言われてしまいました。
どの手かも何に乗らないのかも分かりませんが……。
決意は固いようなので「じゃあ◯◯さん(上司)に言えばいいと思いますよ」と伝えるとツンツン社員は懸念があると言い始めました。
「私の能力が失われるのは惜しい筈なので引き止めにあうはずです」(私が軽く引き止めてしまい増長させた感はある)
「どう足掻いてもすんなり辞めさせてくれるとは思えないです」
「すんなり辞めるために何か良い方法はないですか?」
余りにも自己を知らなさすぎる言動の数々に猛烈な不快感を覚えつつ「大丈夫だと思いますよ。話して来ますね」と伝え私は足早に離席して社長の元へ。報告を受けた社長は「よっしゃ」と言い音速で手続きへ。そしてツンツン社員は午後イチで会社を去ることになりました。
エレベーターまで見送ってドアが閉まる際に「これからはライバルですね(キリっ)」と言われてしまいましたがそれっきりです。
■おわりに
大言壮語は本当に良くないですね。
謙虚なのにめちゃくちゃ仕事ができる、職位が高いのに低姿勢というのがいかにカッコいいか。
名言多い、自分の能力を何倍も高く言う、内省しない、努力しないとこの手の方は似たような人ばかりです。そして思ったより生息している。
本記事の主役の方についてもまだまだエピソードはあるし、まだまだ酷いのもありました。色んな理由であえて載せていません。恐らく前の会社に戻ってやるか?と思い辞めたものの戻れなかった筈です。
日本語+2カ国語の習得のためにその他の全てのことを捨て、かつ外国の方と触れ合う機会が多かったためにグローバルで視野が広すぎる目線でしか物事が見れないのだなと私は勝手に想像しています。そもそも特殊スキルが必要な専門職を除いてデキる人は業界が変わってもそれなりにデキます。
今頃どうしているか?まぁどうでもよいですが……。