『戦国小町苦労譚』(せんごくこまちくろうたん)の最新"16巻"が2024年8月9日に発売されました。
本作はめちゃくちゃオススメの漫画です。
それにしては発売からご紹介までは遅いという話ですが、歴史ものは流れが読めてしまうので長いと少し飽きるのです……。1巻~10巻くらいまでは発売日に即読んでいたのですが最近の巻は後回しになっていました。
そして思い出して先ほど読んだのですが最新"16巻"は鳥肌がたちました。
私が歴史好きというのもありますが漫画で鳥肌が立つのは超極稀です。
当然レビュー評価も高い数値を維持しており巻によってばらつきはありますが概ね4.50以上と高評価です。最新の16巻は4.60となっています。
歴史を好きになる、勉強が好きになるキッカケとして子供に読んでもらうのも大いにありだと思います。私は小学校時代に学研まんがの人物日本史を読んだのがキッカケで歴史が好きになりました。そして日本史、世界史、古典では95点以下をとったことがありません。めちゃくちゃカンニングを疑われていましたが……。
そんな超オススメ漫画『戦国小町苦労譚』のご紹介と最新"16巻"の感想です。
ネタバレを含みますので閲覧注意です。
■『戦国小町苦労譚』とは?
主人公の女子高校生「綾小路静子」(あやのこうじしずこ)は農業高校に通っている歴史好き&農業オタクでした。そんな「静子」が戦国時代にタイムスリップしてしまいます。そして賊に襲われてしまいますが助けに入ってきたのは尾張の足軽、お屋形様と呼ばれる男は「織田信長」でした。
現代の服装は不審過ぎるので殺されそうになりますが自分が役に立つことをアピールしてなんとか助かった静子は信長に仕えることになります。
最新の技術で農業を発展させると信長に言ってしまった静子はいきなり村長を任されます。しかし戦国時代は男尊女卑もあり静子はめちゃくちゃ舐められています。
言う事をきかない村民が多い中で静子は奮闘し協力してくれた村民の田畑を大きく実らせました。
そして様々な作物を量産していきます。
現代では当たり前となっている知識や技術を元にこの時代では非常識なことや知られていないことを次々に実践して成果を上げて行きます。
この時代は身長も低く瘦せ細り、赤ちゃんの生存率も高くありませんでしたが静子の存在で織田領の人々はどんどん逞しくなっていきました。
独眼竜の伊達政宗が159.4cm、赤備えの山県昌景にいたっては140cm弱と知った時は衝撃を受けました。当時は150cm台が平均だったんですよね。
そして神のように扱われる静子、最初の反抗的な態度は1ミリもありません。
現代に帰りたいと思っていた静子も知り合いが増えて農業に集中できる環境に複雑な心境になっていきます。
そして冷酷だと思っていた信長に対する見方にも変化がありました。
争いを無くすために国を纏めないといけないという信長の言葉が静子に刺さったのです。
しかし歴史を知っている静子は複雑な気持ちでした。
志半ばで倒れることを知っていたからです。
だからそれまでは信長に協力して支えようと決意したのでした。
ここまでが1巻です。
そして2巻~6巻もめちゃくちゃ面白いのですが「7巻」でいくつか大きく動きます。
まずは謀反人の「明智光秀」です。
どんな人だろう?と思い会った静子でしたが謀反を起こすようには見えないと感じたようです。
それから近衛前久(このえさきひさ)です。公家の頭領的な存在だった近衛前久を静子が織田陣営に引き込みます。実際の歴史でも引き込みますがこれは史実よりも早い段階でした。
そして信長と近衛前久を引き合わせることに成功した静子、近衛前久は静子を高く評価しいずれ表舞台に出すときにただの静子ではいらない虫が寄って来るし貫目が足りないのでは?ということで自分の養子にすることを提案します。近衛静子の誕生です。
信長にとってもこれはとてつもなくポジティブなことでした。公家の頭領の養子が配下にいることになるのですから。
最後に足満おじさんという人物です。
この足満は静子が現代にいた時に両親とドライブをしていると道路に刀を持った状態で倒れていたのを助けたことがあります。現代で刀を持って傷だらけの男を助けるのはデンジャーですけどね……。静子のご両親は底なしに良い人だったみたいです。
そして車やテレビに驚く足満をかいがいしく世話したのは静子でした。
そしてこの足満はよく本を読んでいたようです。歴史の本を。
静子と同じ場所ではなかったものの戦国時代にやって来た足満、足満は信長の正室である濃姫に最初は仕えていました。そして濃姫を狙う刺客を切り捨てたことで記憶が蘇ります。その時に用いた刀は天下五剣の内の1つ「三日月宗近」でした。
足満おじさんは剣豪将軍こと足利義輝でした。
義輝は先の三日月宗近の他にも「童子切安綱」、「大典太光世」、「鬼丸国綱」と天下五剣の内の4つを持っていたのです。
信長から「再び天下を目指すおつもりか?」と問われた足満は静子ファーストであると宣言します。そして静子がいる所に自分もいると言うのです。
信長からすれば凄腕の武将&現代の知識を吸収したスーパーマンが陣営に加わったことになります。しかも足満は静子と違って元々戦国武将であるため人を傷つける技術を使うことに躊躇いは全くありません。こうして強力な人間が陣営に加わったのでした。
主人公は信長サイドに付くIf漫画では光秀がどうなるか?、本能寺はどうなるか?が気になるポイントです。本作はどうなるのか?
また秀吉は目立っていないものの登場時から弟の秀長が静子を警戒しているのが気になります。
農業改革、栄養革新、交通整備、磁器作成、清酒精製、望遠鏡作成、クロスボウや炸裂弾の作成など次々と進めていきます。
上杉謙信と会い、本多忠勝に惚れられ、前田慶次と可児才蔵に守れる静子は1巻では信長を見守るスタンスでしたが考え方が現代に近い信長に協力して天下を統一してもらった方が皆の平和に早く繋がると思うようになっていきます。
歴史を学びながら楽しめる作品で超オススメの漫画です。
ここからは最新"16巻"の感想で更にネタバレします。
■最新"16巻"の感想
16巻は武田との激突がメインの巻です。
密偵からの報告を受ける武田信玄、静子が最前線に出ていないのは信長に企みがあるからと看破します。
一方、信長の密命を受けてなにやら動いている静子を秀長は警戒します。秀吉ファーストな秀長は静子を最初から危険視しているのです。本作の本能寺はこの秀長が絡むのかもしれません。史実では兄をめちゃくちゃ支える超縁の下の力持ちでしたが本作でも優秀なようです。
これまでの巻で技術革新により大きく発展する織田領に間者を放ち探っていた他家、しかし信長はそれが分かっているため静子の家をとてつもない要塞にして警戒を最大レベルにします。そして同じく現代知識を持ち織田陣営のキーマンとなっている足満おじさんこと足利義輝にも間者の探りや調略が忍び寄っていました。
しかし剣豪将軍の足満は忍び寄る間者や調略のために手紙を渡してくれる密偵をバッサバッサと切り捨てます。コーエーの信長の野望シリーズでも足利義輝は武力が突出しいて高いですが納得の強さです。16巻で女間者が渡してきた手紙を見た足満は憤っていたので内容は静子に関する事かもしれませんね。
織田と武田の戦に欠かせないのは徳川の存在です。
武田からは四天王の1人で鬼美濃と呼ばれたチート武将「馬場信春」が家康の調略にやってきます。何度も苦い思いをさせられた武田家を警戒して本多忠勝などの手練れを伴いながら完全武装の家康に対して馬場信春は手ぶらで上半身裸の状態でした。
馬場が大物ということもありますが武田は徳川を舐め切っていたのです。
そして武田はこの場に足満も呼んでいました。そして馬場は足満を公方(室町時代に足利将軍家を読んでいた)様と呼びます。
家康と足満に対して武田が織田を潰すのは当然だから今のうちに降れという馬場、しかし現代で歴史書を読み漁っていた足満は過去形で「勝ったのは我々だ」と言い残して去ります。
これに対して失笑する馬場でしたが足満の眼つきに震えあがります。
当時無敵の武田にあって武田四天王と呼ばれ生涯の戦で手傷を追わなかった知勇兼備の鬼美濃がです。
そして武田信玄の号令、足満と家康の調略は失敗しましたが織田攻めを宣言します。
織田家では密命を帯びて準備をしていた静子と信長が話をします。
静子は思ったより準備が進んでいないことを伝えますが信長は全幅の信頼を寄せている静子を信じるというのでした。
そして信玄の出陣です。足満と馬場信春のやりとり、そして信玄の出陣のコマは鳥肌が立ちました。
この見開きのコマは本当に壮観です。
一方、静子は秘密兵器の最終調整を行っていました。それは連射が出来る銃です。マシンガン程ではありませんが火縄銃は1発撃つと都度弾丸と火薬を装填せなばならず点火薬を入れたり火縄を挟んだりと次の発射まで20秒~30秒ほどかかるのでした。それが連射となれば全く変わります。
本作は三段構えではなく連射の銃で武田と戦うようです。
そして静子の号令です。見た目は可愛らしいですが既に織田家の中でも圧倒的な成果を上げている静子に全員が従っています。
出陣前夜、多くの命を奪うことなどに悩む静子に足満が語り掛けました。
ここで16巻は終わりです。
武田は長篠の戦で織田と徳川にトドメを刺されましたが早く信長に天下をとらせて平和にしたい静子は信玄存命のこのタイミングで勝負をかけるようです。
17巻はどうなるのか?
16巻は胸熱展開もあり、続きが気になる終わり方となりました。
とにかく面白い超オススメの漫画です
■おわりに
私が歴史に興味を持ったのは小学5年生の時に図書室で見つけて読んだ「学研まんが人物日本史」が最初のキッカケです。
最初に読んだのはこの伊達政宗でした。特に意味はなかったと思いますがたまたま選んだ伊達政宗が面白くてシリーズを全て読みました。そして「人物日本の歴史」も制覇しました。
特に織田信長、豊臣秀吉、伊達政宗は繰り返し読んだと思います。親に買ってもらい(父も歴史好きでこれ系はすんなり買ってくれた)読みまくりました。その後は多くの歴史に関する小説や考察本を買いましたが、このシリーズは今も実家に置いてあります。
そして同じく小学校5年生の夏休みに祖父の家で暇過ぎてたまらなかった時にそれまでは一度も読んだことがなかった小説を買いました。「三国志」です。
最初に買ったのは吉川英治「三国志」ではなく、この青い鳥文庫「三国志」でした。初小説でしたが寝ないで読んだ記憶があります。以降は日本の戦国時代だけでなく中国の歴史にも興味を持ちました。
学歴がない私が多少働けているのは歴史好きが影響していると思っています。
本記事でご紹介した『戦国小町苦労譚』は読みやすく子供も楽しめるので超オススメです。
ご興味を持ってくれた方がいらっしゃれば読んでみて頂けると嬉しく思います。